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 SEED Revival-Ver.ARIS-    第一部「導かれし運命」

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統一地球圏連合政府樹立三周年記念式典。
九月十一日に執り行われたその式典は、華々しいものでした。
統一連合の盟主として、オーブは振舞わなければならなかったからかもしれません。
世界各地から要人の集まる大祭――その意味を、多くのオーブ市民は理解できませんでした。
それほど、オーブは平和だったのですから。



 「何というザマかっ!」

 オーブに本拠を置く統一地球圏連合政府直属治安維持警察機構、通称『治安警察』。この怒声が発せられたのは、そのオフィスビルの一室であった。

 「各地からの要人が招かれる今回の式典において、予想される事態を未然に防がねばならんという情勢を貴様等は理解しておるのか! 『暴漢に打ちのめされました』等と、よくもおめおめと報告しに来たものだ!」
 「面目次第もありません……」

 怒鳴りつけられた四人の青年達は一様に項垂れる。その様子を見ながら、怒鳴りつけたエイガー=グレゴリーはしかし深々と溜息を付くと、振り上げた拳を下ろす事に決めた。彼らを怒鳴りつけた所で、事態が好転する訳ではない。

 「もうよい、下がれ。暴漢の特徴をまとめて報告しろ。各部隊に配布し、場合によっては拘束する」
 「了解しました!」

 やっと退出出来る――四人の青年達の表情にはそうした感情が見えた。
 無理もないかもしれない。二メートル近い体躯に、それに見合う隆々たる筋肉。並みの人間であれば恐怖を感じる迫力がエイガーという男にはあった。彼は禿げ上がった頭を撫でながら手振りで部下達を部屋から退出させると、白い髭をごつい指で弄る。考え事をする際の、彼の癖だ。

 (それにしても若手とはいえ治安警察の猛者四人同時に、か。相当な手練という訳か。早急に手を打つ必要があるが、動ける者達でどうにか出来るかどうか。全く……)

 「面倒な時に、面倒な事が続くか。つくづく、面倒な事だ」

 ぶつぶつと一人愚痴る。
 最近の治安警察に求められる業務は多忙を極めていた。統一連合に反対する勢力の逮捕は勿論の事、『反乱を起こしそうな分子』の確保、ないし捕縛も求められているのだ。三周年記念式典を控えての事であるから、仕方の無い事ではあるのだが。
 後数時間で式典は開始される。何事も無く式典が終わってくれと、エイガーは祈りたい心境だった。




 さてその頃、『手練』と評された男は何をしていたかというと。

 「この馬鹿! 大馬鹿! 格好付けの大間抜け! いい加減にしなよ!」

 ……怒鳴りつけられていた。

 「コニール、そう頭ごなしに言うなよ。俺だって反省してるんだ」

 憮然とした表情でシン。反省しているという割にはふてぶてしい。当然怒鳴りつけた少女、コニールの柳眉は収まる様子も見えない。

 「そりゃ反省はしてもらわないとね。体を解すために公園で休ませれば早速そこで治安警察とトラブルを起こす、更には『落し物』までしてくるんだから!」

 冷凍保存から目覚めたばかりの体は、本調子という訳にはいかなかった。そのためシンは体を解すために公園を散歩する事にしたのだ。まあ、それでもあれだけの動きが出来るのだからそこは誉められるところなのだが。
 とはいえ、『落し物』はフォローのしようも無い。

 「普通『腕時計』失くす!? しかもアレ、ただの『腕時計』じゃないのよ!?」
 「解ってるって」
 「解ってる奴が失くすか!? 大体アンタこれから大役があるってのに、早速治安警察にマークされちゃたじゃないのよ! 何のためにこんな手の込んだ方法でオーブに進入したってのよ!?」

 ……取り付く島も無い。
 シンはぼりぼりと頭を掻きながらコニールの流れに任せる。それしか出来ない、とも言うが。
 しばらく経って、ようやくコニールの悪口のレパートリーが終了したらしい。ぜえぜえと息も絶え絶えになり、ようやく呼吸を整えてからコニールが言う。

 「とにかく、今後の事を考えないと。通信に関してはサングラスで代用出来るからいいとして、その格好をなんとかしないと。その黒ずくめじゃ悪目立ちするし、もう治安警察にマークされてるだろうしね」

 実のところ、その『悪目立ちする』黒ずくめの服を選んだのはコニールなのだが、シンは黙して言わなかった。もはや何を言っても反撃されるのは目に見えていたからだ。肩をすくめて、シン。

 「なら、どうする?」
 「そりゃ、着替えるしかないけど……今からってのも、ね」

 作戦開始まで後二時間。これから洋服店に行って購入してくるという手段もあるが、それでは結局目撃情報を多くしてしまうし、移動や混雑などのタイムロスを考えると作戦スケジュールに間に合わない恐れも出てくる。それでは本末転倒だ。
 ふと、コニールは窓の外を見やる。そこにコニールは突破口を見出していた。

 「……仕方ないわね。非常時だからもう一回『乱闘』してもらうわよ、シン」

 その視線の先には、派手な装飾を施されたトレーラーがあった。そのトレーラーの側面には白地に赤でこうでかでかと書かれていた――『クライン私設歌劇団』と。




 手の中には銀の輪――もとい、男物の腕時計。
 ごつく、重く、とても少女が着ける類の代物ではない。しかしソラはそれを左手に填めて、嬉しそうにぶんぶんと腕を振りながらオーブの中央通りを歩いていた。
 周囲はこれから始まる統一連合三周年記念式典のためごった返していたが、ソラはその中をすいすいと掻き分けて歩いていく。元々込み合う通りだから、慣れているのだ。
 同じように、すいすいと通り抜けていく少女がソラに並ぶ。親友の一人、シノ=タカヤだ。シノはソラの左手に嵌った腕時計にすぐに気が付いた――どう見ても似合わないからだ。

 「ずいぶんとゴツい腕時計ね。趣味変わった?」
 「えへへ、似合う?」

 すぐにソラはそう返す。シノは少しだけ考えたが、真っすぐに言った。

 「ごめん、似合わない」

 シノという人間の性格が解る言い様である。しかし、ソラも別に気分を害しはしなかった。

 「そりゃそうだよ、落し物だもの。あの人に届けてあげようと思って、ね」
 
 朝方、颯爽と現れたあの人――黒ずくめの、赤い瞳の青年――その雄姿がまざまざとソラの脳裏に蘇る。幾分か美化されたその姿は、ソラの心に強烈にインプットされたようだった。

 「……あの人、ねぇ。警察に届けといた方がいいんじゃない?」

 シノは寄宿舎での朝食の際、珍しくも熱っぽく語っていたソラの姿を思い出しながら言った。どう考えてもあのテンションは普段のソラとは違っていただけに、シノとしては距離を置いて欲しいと思うのだ。
 とはいえ、今のソラにはそんなシノの思慮など考えもつかない。

 「警察の人も忙しそうだったし、大丈夫よ。あの人、目立つもの」
 「それもそれでどうかと思うんだけどね……」

 九月とはいえ、黒ずくめに黒いコート姿。それは、確かに目立つ服装である。

 「じゃあ、私『ロンデニウム』でバイトだから。じゃあね、シーちゃん」
 「うん、気を付けてね」

 片手を上げて微笑むと、ソラが走り去る。
 シノとしては、どこかに引っかかるものがあった。或いはそれは、予感めいたものだったのかもしれない。しかしシノが気付く間もなく、雑踏がソラを押し流していってしまった。
 当人同士が気付きもしない、運命の別れ道。或いはそうしたものは、この様に誰にも気付かれないものかもしれない。


 雑踏に紛れて、誰かが呟いていた。

 《やれやれ、何とも面倒な事になったものだ》と。




 シラヒ=ホス=ホデリは物分りの悪い方ではないと自負している。
 命令とあれば何なりと遂行し、主君には伏して従う。そして、主命に間違いがあれば、一身を賭けての諌言も厭わないだろう――常日頃からそう考えているのだ。よく言えば真面目、悪く言えば融通の聞かない堅物。それがシラヒという若者である。
 そういう人間だからこの様な状況に陥った時、シラヒという人間は脂汗すら流すのである。

 「……何故だ、何故俺がこんなことをしなきゃならんのだ……」

 訓練に次ぐ訓練、テストに次ぐテスト。それらを乗り越えて、英雄キラ=ヤマトと轡を並べる精鋭部隊『ピースガーディアン』に入隊出来た時、シラヒは心から己を誇らしく思い、一生を賭けて組織に仕えようと思った。それは彼という人間が『名誉』というものを重んじる性格であったからかもしれない。
 そうであるからこそ、彼は今の状況を鑑みる度に納得が出来なかった。

 「うるさいわね、いいからさっさと着替えなさいよ。アンタが最後なのよ」

 彼の背後から彼の同僚であるレイラ=ウィンが声を掛ける。彼女はさっさと着替えを済ませ、心の準備も済んでいる様だ。とはいえ刺々しい言動になるのは、少々強気な彼女の性格というだけでもないだろう。

 「そろそろ準備できましたか? ……なんだシラヒ、まだですか。早く着替えて下さい」

 もう一人の同僚、ウノ=ホトがトレーラーの荷台に付けられたドアを開いて中の二人に促す。既にウノは完全に覚悟完了しているらしく、見に付けた『扮装』をもはや恥じてはいなかった。
 そう、統一連合三周年式典において彼ら三人の新人ピースガーディアンに言い渡された任務は『子供達の警護』兼『子供達を喜ばせる事』――即ち、コスプレであった。

 「畜生……! 俺は、俺は、俺はぁぁぁぁぁぁっ!」
 「アンタはまだいいわよ! アタシなんか『魔女っ子』よ!? なんで最近の『魔女っ子』ってのはこんなフリフリでミニで変なステッキ持たなきゃいけないのよー!?」
 「何でもいいですから、早く着てください。大丈夫、すぐに悟りますよ」
 「「悟りたくないっ!」」
 
 絶叫するシラヒ、呼応(?)するレイラ。それを冷めた眼で見るピエロ姿のウノ――この三人の関係がよく分かる構図である。
 しかし、時は無常であった。
 レイラが諦めたようにトレーラーから出て行き、シラヒ一人になった時、彼もまた覚悟を決めなければならないと悟った。しばし瞑目した後、決然と瞳を開き、自分に割り当てられた衣装を掴んだ時――


 彼の意識は、そこで途切れた。




 ばさりとマントを翻し、シンは歩く。
 やたらと衆目を浴びるが、怪しまれてはいない。
 シンとしても多少恥ずかしいが、この際仕方ないだろう。背に腹は変えられないのだ。仮面にマント、体のラインがはっきり分かるスーツ――間違ったアニメか漫画に出てくるヒーローの扮装、といえばまだ聞こえはいい。そういうラインの仮装である。シンはバイオリンケースを持っていたのだが、それがまた仮装に合うらしく何度か「カッコイイ!」と子供達に言われていた。
 ……正直、あまり嬉しくはなかったが。
 とはいえ仮装の効果はあったらしく、目的地まで移動する間、シンを咎める者はいなかった。
 シンは目的ポイントである廃ビルに入っていくと、気持ちを切り替えていった。これから、自分はカガリ=ユラ=アスハを狙撃するのだ、と。
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